
タクシーの屋根に付いている、光る看板みたいなもの。あれって何のため?と思ったことはありませんか。あれは、「あんどん」と呼ばれるこの装備です。正式には「表示灯」と呼ばれます。実は、ただ会社名を見せるためだけのものではありません。本日は、その「あんどん」について解説いたします。
そもそも、なぜ「あんどん」と呼ぶの?
「あんどん」という名前は、昔の照明器具「行灯」に由来します。
行灯は、木や竹などで作った枠に紙を張り、その中に油皿を置いて火を灯す照明器具です。「あん」「どん」は、それぞれ「行」「灯」の唐宋音(日本の漢字の音読みの一種)に由来するとされています。
タクシーの屋根にある表示灯も、夜になると光り、小さな灯具のように見えます。その見た目や役割から、一般に「あんどん」と呼ばれるようになったと考えられています。 正式には「表示灯」ですが、今でもタクシー業界では「あんどん」という呼び方が広く使われています。
「あんどん」は、タクシーの身元を示す表示灯
タクシーの屋根に付いている表示灯には、タクシー事業者の名称や記号などが表示されています。
地方運輸局が定める車体表示の取扱いでも、タクシーの屋根には、事業者名や記号などを表示した表示灯を装着することが定められています。地域によっては「TAXI」や所属団体の名称、記号などが表示されます。つまり、あんどんは「この車がどのタクシー会社やグループに属しているのか」を外から分かりやすくするためのものです。 形や色、デザインは会社やグループによってさまざまなので、街中で見比べてみると意外と個性があります。
「空車」「賃走」とは別の表示です
ここで少し紛らわしいのが、「空車」や「賃走」と書かれた表示です。
こちらは屋根のあんどんとは別物で、車内の前方などに設置される表示装置です。空車なのか、お客さまを乗せているのか、迎車なのか、といった営業状態を知らせるもので、
・屋根のあんどん=どのタクシー会社・グループかを示すもの
・空車・賃走などの表示=その車が今どんな営業状態なのかを示すもの
という違いがあります。
普段はまとめて「タクシーの表示」と見てしまいがちですが、役割はしっかり分かれています。
実は、忘れ物をしたときにも役立つ
ここが少し意外なポイントです。東京タクシーセンターの「忘れ物について」の案内を見ると、タクシー会社や無線グループを探すための手がかりとして、表示灯の形状が掲載されています。
「会社名を覚えていないけれど、屋根のマークなら見覚えがある」
そんなとき、あんどんの形やデザインが、乗ったタクシーを特定するヒントになることがあります。
タクシーに乗ったとき、レシートを受け取っておくことが一番確実ですが、屋根のマークをなんとなく覚えておくことも、思わぬところで役に立つかもしれません。
「あんどんが光ったら緊急事態」ではありません
タクシーの雑学として、「屋根のあんどんが点滅していたら緊急事態」という話を見かけることがあります。これは半分正しく、半分注意が必要です。
あんどん(正式には社名表示灯)は、もともと防犯のために生まれたもので、ドライバーが強盗に遭ったときなどに運転席のスイッチで赤く点滅させ、外部にSOSを伝えられるようになっています。
ただし、あんどんは空車時などに普段から点灯しているものです。点灯のルールも地域や会社によって異なり、車両によって防犯装備も違うため、「屋根が光っている=緊急事態」とは言えません。注意すべきは「赤く点滅している」場合や、表示板に「SOS」などが出ている場合です。
まとめ
タクシーの屋根に付いている「あんどん」は、正式には表示灯と呼ばれ、事業者名や所属グループなどを外から分かりやすく示す役割があります。名前の由来は、昔の照明器具「行灯」。夜に光るその姿が、昔ながらの灯りを思わせることから「あんどん」と呼ばれるようになったと考えられています。
そして意外なところでは、忘れ物をした際に、あんどんの形やデザインがタクシー会社を思い出す手がかりになることもあります。
これからタクシードライバーを目指す方にとっても、普段何気なく見ている装備の意味を知っておくと、街を走るタクシーの見え方が少し変わってくるかもしれません。
