コタニ

「タクシーに乗ろうとしてドアに手を伸ばしたら、勝手に開いた!」
日本人にとっては見慣れた光景ですが、海外から来た人にとって、タクシーの自動ドアは少し不思議な存在です。
実際、日本政府観光局(JNTO)の外国人向けタクシー案内にも、ドアは自動で開閉するため、自分で操作しないよう説明されています。訪日外国人が年間4,000万人を超えた今も、日本ならではのタクシー文化のひとつとして注目されています。

なぜタクシーのドアを自動にしたの?

タクシーは、一日に何度もお客さまの乗り降りがあります。そのたびにドライバーが車から降りてドアを開閉していては、手間も時間もかかります。
乗客にとっては、自分でドアを開け閉めする必要がなく、ドライバーにとっても乗降のたびに車外へ出る必要がありません。こうしたタクシー特有の使い方と相性がよかったことが、自動ドアが定着していった背景のひとつと考えられます。

お店の自動ドアとは少し違う

地域のタクシー協会の接客向上運動では、「車内温度の調整並びに車内消臭を徹底し、快適な車内空間を保つよう努めること」といった表現が実際に使われています。つまり、温度を数字で一律に決めるというより、お客さまが過ごしやすい空間を保つことが重視されているようです。何よりも、お客さまに「エアコンの温度はちょうどいいですか?寒くないですか?」など直接のコミュニケーションをはかることが大切です。私も運転手の方から何度か丁寧に聞かれた経験が何度かあります。

車両そのものにも、空調の工夫がある

タクシーの「自動ドア」は、人が近づくとセンサーが反応して開く、お店の自動ドアとは仕組みが違います。一般的には、運転席からドライバーが「左後方」のドアを開閉します。タクシー用自動ドアメーカーのトーシンテックも、自社製品について「運転手の操作で車両左後方ドアが開閉」するものと説明しています。
乗客から見ると自動で開きますが、実際にはドライバーがタイミングを見ながら操作しています。

始まりは1959年。東京五輪を機に全国へ

では、いつから日本のタクシーに自動ドアが広まったのでしょうか?トーシンテックの公式な沿革によると、同社は1959年にタクシー用オートドアの生産を開始しています。そして大きな転機になったのが、1964年の東京オリンピックでした。

同社はこの東京五輪を機に、全国のタクシー会社でオートドアが採用されたとしています。海外から多くの人が日本を訪れる大イベントが、日本独特のタクシーサービスが全国へ広がるきっかけのひとつになったのです。現在ではタクシー用自動ドアの代表的なメーカーとなり、愛知県の「愛知ブランド企業」の紹介でも、タクシー用自動ドアを日本独自のサービスとして紹介しています。

今も外国人観光客には珍しい

60年以上が経ちましたが、自動ドアはいまも海外から見ると珍しいようです。

現在のJNTOの外国人向けサイトには、「ドアは自動で開閉するため、自分で操作しないように」という注意書きがあります。また、外国人旅行者向けのNAVITIMEの案内でも、日本のタクシーで外国人観光客が驚く特徴のひとつとして自動ドアが紹介されています。

2025年の訪日外客数は4,268万3,600人で過去最多となりました。さらに2026年上半期も2,108万4,800人が日本を訪れています。インバウンドが当たり前になった時代でも、何十年も前から続くタクシーの仕組みが新鮮に映るのは面白いところです。

タクシー専用車ではドアそのものも進化

現在の代表的なタクシー専用車、トヨタ「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」では、ワゴンタイプのやや大型のタクシーに、乗客が利用する左側の後部ドアに大開口の電動スライドドアが採用されています。

昔のセダン型タクシーから車の形は変わっても、「ドライバー側から乗客のドアを操作する」という日本のタクシー文化は受け継がれています。

まとめ

日本のタクシーで当たり前になっている自動ドア。その歴史をたどると、1959年には専用装置の生産が始まり、1964年の東京オリンピックを機に全国へ採用が広がったことが確認できます。
そして現在も、外国人向けの公式観光案内で使い方を説明されるほど、日本ならではの特徴として残っています。外国からのお客さまを迎えた東京五輪をきっかけに広まり、インバウンドが過去最大規模となった現在も外国人を驚かせている。タクシーの自動ドアは、時代を超えて受け継がれてきた日本のタクシー文化のひとつといえそうです。

参考
・日本政府観光局(JNTO)「Taxis in Japan」
・日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」
・国土交通省「『交通空白』解消本部